トビーくんのお世話ができないかという打診があったので、喜んでお引き受けした。

飼い主である上階の住人が旅に出る数日のあいだ、日に4回の散歩とエサやりをする。

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トビーはおそろしく手のかからない子だから、安全にさえ気をつけていれば楽勝のお仕事!

てな具合に屋上へ連れていくと、ときどき別のワンコに出会うことがある。

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1歳のゴールデンレトリーバー。最上階に住む富裕バングラデシュ人の飼い犬だ。

バングラデシュでこうした愛玩犬を手に入れることは難しく、この子はタイから買ってきたものと聞いた。


ゴールデンちゃんを屋上へ連れてくるのは飼い主家族ではない男性である。

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たいていの富裕層はイヌの世話を自分ではせず、散歩屋を雇っている。

散歩屋といってもいろいろで、イスラム教徒にはイヌ嫌いが多いから、金のためと割り切ってやっている人もいるだろうが、この人は大変なワンコ好きと見えた。

ただ連れ出して遊ばせておくのではなく、優しく撫でたり話しかけたり、我が子のようにかわいがっている。

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それにしても、朝となく夕となくゴールデンを連れて現れるこの男性、通いで働いているとは思えない。

「飼い主さんの家に住みこんでいるんですか?」

とたずねたら、やっぱりそうだった。

彼は、ふるい言葉でいえば下男として雇われており、イヌの世話は仕事の一部にすぎない。

仕事のことはさておき、彼が「どん詰まりの部屋」に暮らす様子が想像され、なんともいえない気分になった。

日本で生まれ育った私にとっては遠い、遠い景色。


ゴールデンちゃんのお風呂タイムを見ていたら、屋上にふたりの女性が現れた。

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初対面で尋問のようなことはしたくないし、そもそもこうした階層の人びとは英語が通じないことが多いので尋ねなかったが、彼女らも住み込みで働いているのかもしれない。

(だとしたら、このふたりはどこで寝起きを...?)

この国では、家事使用人のブラック待遇がしばしば話題になるから、なんだか悪い想像ばかりして気が重くなってしまう。

余計なお世話なんだけどね。


元気のかたまりのようなゴールデンちゃんは、陽気に駆け回っていたかと思うと、いつの間にかお世話係さんに寄り添い、じっとしていることがある。

これが10分、15分と続くことがあるから不思議だ。

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     彫像のようなふたり

一日のうちのほんのひととき、撫でたりオヤツをくれたりするだけの飼い主一家より、この人とのあいだに強い絆ができあがっているのだろう。

そして「下男」さんにとってワンコとの時間は、大切な自分だけの時間・・・

なんていう妄想を、ちょっと遠い目をした彼を見ながらしてしまった。

ふだん視界に入ってくることの少ないバングラデシュ下層労働者のリアルを、思いがけず目撃した気分だ。


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