ダッカへ来て間もないころ暮らしていたホテルで、ある朝のこと。窓から何げなく見下ろした路上に、見慣れない光景があった。

ピンときて、すぐに下りていった。

それはゴミを集める人たちだった。

リヤカーの脇に置かれた黒い袋は、ホテルから出てきたゴミ。

trash collector (2)

ゴミの分別作業をしているようだったので、近づいてみた。

ペットボトル、ビン、缶、紙パックなどに分けており、これはきっとリサイクルにまわすのだろう。

trash collector (3)

衝撃を受けたのは、悪臭だった。

わがホテルから出る袋をはじめ、彼らが受け取るゴミはまったく分別されていないらしく、生ゴミがひどく臭っていた。

私たちの部屋は台所つきで、野菜の皮やタマゴの殻といった生ゴミがけっこう出たが、ゴミ箱はただ一個あるのみで、そこにペットボトルやらガラス瓶やらと一緒に放り込むしかなかった。

部屋の掃除の人に分別について尋ねても、ピンときていたのかきていなかったのか、「そこに全部入れればいい」と繰り返すのみ。

日本やアメリカで分別の徹底が染みついた身には気持ち悪くてしょうがないが、もしかしてバングラデシュにはゴミの分別という概念が存在しないのかとも思い、ごた混ぜにしていた。


そしてこの悪臭である。

たとえば5月でも気温35度オーバー、湿度99%という日が多いバングラデシュでは、ものが腐るスピードが早い。

この朝の私は、生涯で最高に強烈な腐臭を嗅いだと思う。

マスクもせず作業をする人たちは、すでに慣れているのかもしれないが、これは人間が働く環境ではない。

世界中のどこでもゴミを集める人たちの社会的地位はむかしから低く、日本でもそうだったように「賎民」の仕事とされ、かれらの労働環境が斟酌されることは少なかった。

だが21世紀にあってこのザマはどうだ...

とやるせない気持ちになった私は、その日からゴミの分別を始めた。

生ゴミは厚めの袋または使い古しのジップロックに。ペットボトル、ビン、缶、紙パックは汚れを落としてひとまとめに。

私ひとりがこれをやっても1000人がやらなければゴミ収集業者の苦労に変わりはないが、もしも1/1000が軽減されるなら...

なんてのはお題目にすぎず、分別しないことの落ち着かなさを解消するためだけというウワサもある。


ダッカのゴミ処理については「へえ~」という話もあるのだが、それはまたの機会にゆずるとして、ゴミの収集人をめぐる余談。

満タンにしたリヤカーの重さは半端なものではないようで、肩ひもを使い渾身の力で引っ張る姿をよく目にする。

trash collector (1)

この状態のリヤカー、歩くよりもスピードが遅いわけだが、これが車道をふさぐため、ただでさえ渋滞だらけのダッカの道路がまたスローダウン。

ドライバーはさぞかし苛立っているだろうが、なぜか警笛を鳴らすところを見たことがない。

ダッカ市民にはゴミ収集人を労わる優しい心があるのだろうか。

そうかもしれないが、別の理由もある。

この人たちを威嚇すると、「そんなに俺が邪魔か?だったらここで空っぽにしてやるぜ」とばかりに、リヤカーの中身を路上にぶちまけて去って行くことがあるのだという。

その気持ち、とってもよくわかるような...


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